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: 速度ベクトル・加速度ベクトル : 物理学基礎論 A : 導入

運動の記述


第 2 講        (平成 19 年 4 月 17 日)


1つの質点の運動を考える。


基準系 (座標系 : ${\cal K}$、普通右手系) を選ぶ。


質点の位置


成分で表すのが便利


\begin{displaymath}
{\boldsymbol r}=\left(
\begin{array}{c}
x \\
y \\
z \...
...y\hbox{-component} \\
z\hbox{-component} \\
\end{array}
\end{displaymath} (1)

これを、位置ベクトル (座標ベクトル) という。 実際は、時間の函数 ${\boldsymbol r}={\boldsymbol r}(t)$.


色々な座標 : 円柱座標、極座標 (2 次元、3 次元)。これらは、表示の違い。


ベクトルの大きさ : $r=\vert{\boldsymbol r}\vert$ (絶対値記号で表す) $\cdots$ スカラー量


単位ベクトル : 長さ 1 のベクトル。

\begin{displaymath}
{\boldsymbol e}_x=\left(
\begin{array}{c}
1 \\
0 \\
0...
...
\begin{array}{c}
0 \\
0 \\
1 \\
\end{array}\right)
\end{displaymath} (2)

とすると、
\begin{displaymath}
{\boldsymbol r}=x {\boldsymbol e}_x + y {\boldsymbol e}_y +...
...
\begin{array}{c}
0 \\
0 \\
1 \\
\end{array}\right)
\end{displaymath} (3)

と表される。座標系とは、上の三つの単位ベクトルに座標原点 $O$ を 付け加えたもの、すなわち、 ${\cal K}=(O; {\boldsymbol e}_x, {\boldsymbol e}_y, {\boldsymbol e}_z)$


(ここから、数学)


「ベクトルには一般に''線型性''が成り立つ」


線型性とは、 $f({\boldsymbol x})$ をベクトルの函数とした時、 ${\boldsymbol x}$, ${\boldsymbol y}$ を 任意のベクトル、$a$, $b$ を任意のスカラーとして

\begin{displaymath}
f(a{\boldsymbol x}+b{\boldsymbol y})=a f({\boldsymbol x})+ b f({\boldsymbol y})
\end{displaymath} (4)

が成り立つことである。(線型変換、線型写像ともいう) 例えば、 $f({\boldsymbol x})={\boldsymbol x}$ として、 ${\boldsymbol A}=(A_\alpha)$, ${\boldsymbol B}=(B_\alpha)$ (ここに、 $\alpha=x, y, z$ or $\alpha=1, 2, 3$) とすると、 $a{\boldsymbol A}+b{\boldsymbol B}={\boldsymbol C}$ ${\boldsymbol C}=(C_\alpha)$ with $C_\alpha=aA_\alpha+bB_\alpha$ として
\begin{displaymath}
a\left(
\begin{array}{c}
A_x \\
A_y \\
A_z \\
\end{...
...+bB_x \\
aA_y+bB_y \\
aA_z+bB_z \\
\end{array}\right)
\end{displaymath} (5)

の事である。ベクトルの演算としては通常の足し算、引き算や 結合法則、分配法則も成りたつ。上の式は、平行四辺形によるベクトルの 合成として、幾何学的に理解できる。


ベクトル空間 (線型空間ともいう) の概念が重要である。 ``空間'' という以上、それは単なるベクトルの集合ではなく、 そこに何らかの演算 (内積構造) が定義されていなければ ならない。内積と外積という二種類のベクトルの積演算が物理では 必須である。特に、内積は最も重要で、これにより ベクトルの直交性という概念が表される。(これらについては、一応講義で説明 しましたが、ここでは繰り返しません。自分で自習してください。)


第 3 講        (平成 19 年 4 月 24 日)


講義の前半では、ベクトルの内積の復習をすると同時に、新しく「外積」 の概念を説明いたしました。最後に、物理におけるベクトルとはなにか、 というお話をいたしました。


(物理におけるベクトルとは?)


物理におけるベクトルとは、単に成分を並べたものというだけの ものではない。 物理では、測定を可能にする座標系の存在が基本であって、これが 全てを規定する。すなわち、異なる座標系の間の座標変換が基本的 である。座標変換には、並進変換と回転変換がある。すなわち、 2 つの異なる座標系を、 ${\cal K}=(O; {\boldsymbol e}_x, {\boldsymbol e}_y, {\boldsymbol e}_z)$, ${\cal K}^\prime=(O^\prime; {{\boldsymbol e}_x}^\prime, {{\boldsymbol e}_y}^\prime, {{\boldsymbol e}_z}^\prime)$ として、${\cal K}$ での座標ベクトルを ${\boldsymbol r}$, ${\cal K}^\prime$ でのそれを ${\boldsymbol r}^\prime$ で表すと、並進変換は、あるベクトル ${\boldsymbol a}$ を使って ${\boldsymbol r}={\boldsymbol r}^\prime+{\boldsymbol a}$, 回転変換は、ある直交行列 (回転行列) ${\cal R}$ を 使って ${\boldsymbol r}={\cal R}{\boldsymbol r}^\prime$ と表される。 回転した新しい座標系 ${\cal K}^\prime$ を 一意的に指定するためには、一般に(二つでなく) 三つの角度が必要である 事は、オイラーが初めて(?) 指摘した。この三つの角 $\Omega=(\phi, \theta, \psi)$ をオイラー角という。回転行列は、この $\Omega$ の函数である; ${\cal R}={\cal R}(\Omega)$. 物理におけるベクトルは、座標系の回転に対して、その成分が座標ベクトルの 成分と同じ様に変換する量として定義される。つまり、 ${\boldsymbol A}={\cal R}{\boldsymbol A}^\prime$. 一方、スカラーとは、座標系の回転に対して不変な量である。 この様にベクトルとスカラーを定義した時、内積が回転変換に対して 不変量になることは、内積と直交行列の定義から明らかである。 また、1つの応用として、内積が実はどの回転座標系で計算しても よいということから、簡単に $({\boldsymbol A}\cdot {\boldsymbol B})=AB \cos \theta$ という 表式が得られる。ここに、$\theta$ はベクトル ${\boldsymbol A}$ ${\boldsymbol B}$ の間の角 である。同様に、 ${\boldsymbol C}\cdot [{\boldsymbol A}\times {\boldsymbol B}]$ が不変なことから、 外積によるベクトル $[{\boldsymbol A}\times {\boldsymbol B}]$ の大きさが $AB \sin \theta$ で あることも簡単にわかる。


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Yoshikazu ujiwara 平成19年5月3日